会議の進行役や司会を任されたときにやるべきことを徹底解説
会議の進行役や司会を任されると、責任の重さにプレッシャーを感じることが多いでしょう。しかし、事前に準備をし、必要なスキルを身につければ、スムーズで生産的な会議を進行できます。
この記事では、会議の進行役や司会に求められる基本的なスキルや事前準備の方法、実際の会議進行の流れについて詳しく解説します。初心者でも安心して役割を果たせるよう、具体的なポイントや実践的なアドバイスを豊富に取り入れていますので、ぜひ参考にしてください。
1. 進行担当者や司会者がまず知っておくべき会議の目的3種
会議を有意義な時間にするには、会議を行う目的を明確にする必要があります。司会進行者(ファシリテーター)や司会者は、議論の軸をぶらさないためにも、会議を行う目的を知っておくことが重要です。
ここでは、会議の3つの目的について詳しく解説します。
アイデア出し | 「新商品の開発」のような会議では、アイデア出しが目的となります。決められた議題に対し、参加者一人ひとりが自由な角度から意見を出すスタイルが一般的です。アイデア出しを目的とする会議では積極的な提案がポイントとなるため、意見を否定したり、結論を出そうとしたりする必要はありません。参加者全員が安心してアイデアを出せる雰囲気づくりが重要なポイントです。 |
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意思決定 | 「翌年度の予算策定」のような会議では、意思決定が目的となります。事前に出された結論に対して合意を得るスタイルが基本で、決裁者である経営者や管理職が参加します。会議終了後、参加者は自部署のスタッフに会議の結論やその後の動き方などを伝達することが必要です。 |
情報共有 | 「プロジェクトの進捗状況報告」のような会議では、情報共有が目的となります。個々の状況や悩み・トラブルなどを共有することで、新たな行動指針の決定につながるケースもあります。情報共有はメール・チャットやマネジメントツールでも可能ですが、会議は顔を合わせて話せるのがメリットです。目的や状況に応じて方法を選択しましょう。 |
2. 会議の司会や進行役に求められるスキル
会議の司会や進行役には、ファシリテーションスキルが求められます。ファシリテーションスキルとは、会議の進行や議論を円滑にするためのサポートを行うスキルです。
ここでは、会議の司会や進行役に求められる4つのスキルについて詳しく解説します。
2-1. 場づくりのスキル
会議を行う目的や議論の方法、時間配分などを明確にする「場づくり」のスキルを備えれば、会議当日に生産性のある話し合いができます。
場づくりには参加者の選定や役割分担が重要です。社員やメンバー同士の関係性を正確に把握した上で参加者・役割分担を決定することで、全員が話しやすい場を用意できます。
また、会議の予定表にあたる「アジェンダ」を作成して、参加者に会議の目的や内容、役割分担などを共有するのも有効です。チームごとに責任者・リーダーのような立場の参加者がいれば、事前に意見を確認しておくと進行がスムーズになるでしょう。
2-2. 対人スキル
会議の司会・進行役に求められる対人スキルとは、参加者が互いの意見に理解・共感を深め、納得できる結論を導くためのサポートをするスキルです。具体的には、傾聴・質問・観察を通して議論を円滑に進める能力が求められます。
参加者全員が自分の意見・アイデアを出しやすい場を作るには、司会・進行役が一人ひとりの話を傾聴し、気持ちを汲み取りながら会議を進めることが不可欠です。あくまで中立の立場として意見を受け止めつつ、参加者の心情と会議の雰囲気を読み取って会議を適切に進行しなければなりません。
また、意見の対立によって会議の雰囲気が悪くなった場合は、どの立場の意見も尊重しながら場を収めるスキルも必要です。
2-3. 構造化スキル
会議中の議論が白熱すると、意見が乱立して論点がずれてしまうことも少なくありません。会議の目的に沿った議論を展開して会議の目的を達成するためには、構造化スキルが求められます。
そもそも構造化とは、物事全体を把握した上で「構成要素」と「構成要素間の関係」を整理することです。簡単に言えば、ある情報を分解して分かりやすくした上で、分解した要素同士を関係づけて整理する能力を指します。
会議進行における構造化スキルとは、論点や議題を明確にしながら意見や情報を整理するスキルです。参加者の意見が議題全体におけるどの部分に対しての考えであるのかを適切に把握することで、論点のズレを防いで生産性のある議論を展開できます。
2-4. 合意形成スキル
議論で出た意見をまとめ、参加者から結論・採決の合意を得るスキルです。
会議の最後には、今後のアクションを行う人物や期日、アクションの内容などの結論を明確にして、参加者の合意を得なければなりません。会議内で決まりきらなかった内容があれば、次回会議の議題としてまとめることも必要です。
会議の中で多くの意見が出ると、合意を得る過程で意見が割れてしまうケースも珍しくありません。意見の対立に適切に対処し、参加者が納得できる結論を導き出すのも合意形成スキルの1つです。
司会・進行役の力量が問われる難しい場面ではありますが、議論を重ねてゴールに着地させることで、組織の結束力アップも期待できます。
3. 会議を円滑に進めるために必要な事前準備
会議の司会・進行役の仕事は、会議の事前準備からスタートします。会議をスムーズに進めるには、事前準備のポイントを押さえておくことが必要です。
ここでは、会議を円滑に進めるための事前準備の内容や、押さえておくべきポイントについて詳しく解説します。
3-1. 参加者を厳選する
会議参加者の厳選は、司会・進行役の重要な役割の1つです。議題に合わせて関係者を選定し、それぞれの関係性なども考慮しながら参加者を決定します。
会議の参加者を厳選する際のポイントは、人数を最小限に抑えることです。一般的に、会議参加者の適正人数は5人程度とされています。
参加人数が多すぎると1人あたりの発言時間が短くなり、中には一言も発しない参加者が出る場合もあるでしょう。「人数を増やせば多くのアイデアが生まれる」と考える人もいますが、実際は発言しない参加者が増えるケースがほとんどです。
会議の参加者を5人程度に絞ることで、参加者全員が発言するための十分な時間を確保できます。一人ひとりが意欲的に会議に取り組めば、質の高い議論を展開できるでしょう。
会議の生産性向上のためにも、参加者は議題に深く関わる5人程度に厳選しましょう。
3-2. 事前にアジェンダや資料を配布する
事前に参加者に対して会議の予定を記載したアジェンダや関連資料を配布しておくと、それぞれが会議内容を把握できることから、当日の会議をスムーズに進められます。
アジェンダに記載される一般的な項目は、以下の通りです。
- 日時
- 場所
- 参加者と役割分担
- 会議の開催目的
- 議題順序と時間配分
- 配布資料
アジェンダを通して事前に議題や配布資料に目を通してもらえば、会議までにそれぞれの考えをまとめてもらうことが可能です。アジェンダは会議日程から余裕を持って参加者全員に配布しましょう。
アジェンダづくりのポイントとして、議題を詰め込みすぎないことを意識しましょう。議題が多いと一つひとつのテーマに対してじっくりと議論できず、中身のない会議になる恐れがあります。
また、アジェンダそのものに盛り込む情報量にも注意が必要です。参加者の理解を深められるようにと資料を作り込みすぎると、「情報量が多く読みづらい」と感じる人も少なくありません。必要な情報を絞り込み、目を通しやすい資料作りを心がけてください。
3-3. 機材の準備をする
オンライン会議を実施する場合、事前準備として機材の用意も必要となります。オンライン会議に必要な機材は以下の通りです。
マイクスピーカー | 発信者の話す声を拾う外付けマイクです。PCやタブレットの内蔵マイクよりも音質がよく、聞く側のストレスがありません。 |
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ヘッドセット | マイク付きのイヤホンです。「発信者の話す声を拾う」「相手の声を聞く」という両方の機能を兼ね備えているため、ヘッドセットがあればマイクスピーカーは必要ありません。 |
カメラ | 発信者の顔を映すための外付けカメラです。PCやタブレットの内蔵カメラよりも高画質であり、細かな表情のニュアンスまでしっかりと伝わります。 |
デバイス | オンライン会議では参加者全員にPCやタブレットなどのデバイスが必要です。個人のPCなどを使用する場合、スペック・データ容量がWeb会議システムに対応しているかどうかの確認が必要です。 |
また、オフラインの会議であっても、会議室にホワイトボードやプロジェクターなどの必要機材があるか、問題なく使用できるかをチェックしておきましょう。
3-4. 開始・終了時刻を決める
会議の生産性を上げるためには、時間をしっかりと区切ることが重要です。会議の開始・終了時間を決定したら、事前に参加者全員に周知しましょう。
会議時間は「15時から1時間程度」のような表現ではなく、「15時から16時まで」のように開始・終了時間の両方を明確にするのが基本です。時間内に議論を終えられるよう、発表者がいる場合にはそれぞれの持ち時間などもアジェンダに記載しましょう。
また、社内会議の際は、定時内の実施を徹底することも重要です。定時後に会議のために残らなければならないメンバーがいるとワークライフバランスが崩れるだけでなく、集中力を欠いて会議の生産性の低下にもつながります。
会議の開始・終了時刻は定時内で明確に決め、参加者が集中して議論できる環境を整えましょう。
3-5. 進行用の台本を作っておく
会議をスムーズに進行するためには、事前に台本を作っておくことも重要なポイントです。どの参加者にいつ・どのような発言を促すのかを事前に決めておけば、司会のガイドラインとして役立ちます。
まずは会議のキーポイントとなる「提案者からの発表」「採決権を持つ経営者・管理職からの総括」などを明確にし、大まかな道筋を立てましょう。会議の内容によって部署ごとに意見が割れる可能性がある場合には、各部署に発言の時間を設けるのがおすすめです。
議論が進むと予定通りに進行できない場面が増えるケースもありますが、台本があれば本筋から大きく逸れることなく話し合いができるでしょう。
4. 会議の司会や進行役が会議を進める流れ
会議の司会進行役は、会議の進め方や流れを押さえることが重要です。本番でつまずくことがないよう、ポイントや注意点をしっかりと把握しておきましょう。
ここでは、会議の司会・進行役が会議を進める流れに沿って、ポイントや注意点などを詳しく解説します。
4-1. アイスブレイク
会議開始後はすぐに本題に入るのではなく、軽いアイスブレイクで空気を和ませましょう。
そもそもアイスブレイクとは、緊張して氷のように固まった空気を溶かし、場を和ませるためのコミュニケーション方法です。会議やセミナーの冒頭で取り入れて参加者の緊張をほぐすことで、その後の議論において意見を出しやすい空気を作れます。
アイスブレイクでは、会議に関連のない話題を題材とした話や司会・進行役の自己紹介、簡単なゲームなどが用いられます。アイスブレイクの具体例は以下の通りです。
指を使った体操ゲーム |
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両手を軽く握り、片手は親指、もう片手は小指を立てます。タイミングを合わせてリズムよく親指と小指を入れ替え、左右の手で互い違いになるように親指・小指の入れ替えを続けるゲームです。空気が和むのはもちろん頭の体操にもつながるため、朝一番や昼食後の会議のアイスブレイクとして向いています。 |
テーマに沿ったお絵かきゲーム |
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参加者にメモ用紙とペンを用意してもらい、まずは「流れ星」を描いてもらいます。次に「月」「木」を順に描いてもらい、最後に参加者同士で絵を見せ合いましょう。具体的な指示なく絵を描くと、同じテーマでも人によって全く違った仕上がりとなります。参加者同士で絵を見せ合って場が和んだら、個人の主観で物事の捉え方が異なることや、具体的な基準を設けて説明することの重要性についてまとめて締めくくりましょう。 |
4-2. 議題の周知
アイスブレイクを行った後は、改めて会議の目的とゴールを参加者に共有しましょう。その際、全体の流れやタイムスケジュールについても併せて確認します。
本題に入る前に、会議をなぜ行うのか、最終的に何を決めるのかを明確化すれば、参加者全員が目的意識を持って議論に参加できます。目的達成のためにどのような意見を出してほしいのか、どのように貢献してほしいのかにも触れると、議論が本筋から逸れることなく積極的に意見を出してもらえるでしょう。
4-3. 意見交換
意見交換が始まったら、司会・進行役はあくまで中立の立場として議論の円滑化をサポートします。参加者の発言を傾聴したり、参加者の意見に対して質問したりしながら、議論がより深まるよう舵を取りましょう。
また、スムーズな意見交換のために押さえておくべき対策・ポイントは以下の通りです。
意見が合わない場合の対策 |
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参加者の間で意見が合わない場合でも、それぞれの発言を傾聴して受け入れる姿勢を示すことが重要です。その上で、視点を変えた質問を投げかけたり話題を変えたりしながらバランスよく意見を引き出し、最後には全員が納得できる結論に着地できるよう議論を進行しましょう。 |
意見を出さない参加者がいる場合の対策 |
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参加者が自由に意見を出し合うスタイルでは、発言者が限られてしまいがちです。自分の意見をまとめる時間を作ってから発言を促す・1人ずつ順に発言してもらうなどの工夫を取り入れ、できる限り全員が発言できる環境を整えましょう。 |
4-4. 記録と情報整理
参加者たちが意見交換しているときは、ホワイトボードなどを利用して記録・情報整理を行うことが必要です。参加者の意見を可視化すれば、全体に情報を共有しながら議論を進められます。
意見交換中のホワイトボードの記録は、発言の要点を捉えて簡潔に書くのがポイントです。発言の内容がまとまらない場合には、発言者にどのように板書すべきかを質問することで、要点・ポイントをまとめて話してもらえるでしょう。
また、記録は議論の過程や流れが分かるようにまとめるのも重要です。
4-5. 会議の取りまとめ
意見交換を終えて情報を整理したら、議題に対する結論を出す必要があります。
会議における結論の決定方法は、大きく分けて以下の4つです。
決裁者の独断 | 経営者や管理職が独断で結論を出す方法 |
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多数決 | 賛成・反対などの決を採り、賛同者が多い意見を採用する方法 |
スコアリング | 「コスト面」「業務量」などの評価項目を設定してそれぞれの意見をスコアリングし、もっとも高い得点を得た意見を結論とする方法 |
全員合意 | 会議参加者全員の意見が一致するまで話し合う方法 |
議題や会議時間に合わせて最適な方法を選択しましょう。
4-6. ネクストアクションの決定
会議の結論が出たら、決定事項に応じて今後取るべき行動や活動指針などのネクストアクションを確認します。
ネクストアクションを決定する際は、内容をできる限り具体的にすることが重要です。「誰が・いつまでに・何をするか」を明確にして、速やかな行動を促しましょう。
また、議論の中で新たな課題が見つかった場合には、新たな目標や各メンバーが取り組むべき対策をネクストアクションとして設定するのが有効です。
4-7. 議事録の共有
最後は議事録の共有により、参加者以外の従業員にも会議の内容と結論を周知します。議事録作成・共有はスピード感が重要であるため、基本的には会議終了後24時間以内に提出するようにしましょう。
最近では、会議中に使用したホワイトボードをタブレットやスマートフォンで撮影・共有することで議事録とするケースも少なくありません。その場合、会議の結論やネクストアクションについては別途メールなどで共有すると安心です。
まとめ
会議の進行役や司会を務めるためには、事前準備から本番の進行まで、多岐にわたるスキルと知識が必要です。まず、会議の目的や目標を明確に理解し、目的に応じた場づくりや対人スキル、構造化スキル、合意形成スキルを駆使することが求められます。
参加者の選定やアジェンダの作成、機材の準備など、細部にわたる準備を怠らずに行うことで、会議の生産性を大幅に向上できます。また、会議の進行においては、アイスブレイクから意見交換、議題の取りまとめ、ネクストアクションの決定、議事録の共有まで、各ステップを丁寧に進めるのが重要です。