会議の司会進行を行う場合の例文|必要な準備・円滑に進めるコツも
適切な司会進行やファシリテーションは、会議の成否に大きく影響します。一方でうまく進行できなければ、会議時間が長引いたり、何をすればよいのか分からないまま会議が終わったりする恐れがあります。進行役を任された場合、事前にするべき準備や例文を知っていれば、慣れていない方でもスムーズに進行できるでしょう。
この記事では司会進行担当者の心構えから、必要な準備、司会進行の流れ、円滑に進めるコツまで解説します。会議を成功させたいファシリテーター初心者の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
1. 会議の司会進行を担当する場合の心構え
会議の司会進行役は、会議の円滑な進行をサポートすることが主な役割です。会議進行のほかに、参加者に発言を促したり、時間管理をしたりといった役割も担います。
会議の司会進行の役割を果たすには、5つの心構えを持つとよいでしょう。
(1)議題と会議の流れを把握する
会議中に議論が正しく進んでいるか、会議の目的を達成できるかの判断をするために、議題と会議の流れを把握する必要があります。
(2)司会進行の準備を万端にしておく
司会進行役は、参加者の議論を聞きながら、会議の展開や進行のタイミングを考えます。司会進行の務めに集中できるよう、進行表・台本の作成や書記探しなどの事前準備を行いましょう。
(3)中立的な視点を持つ
司会進行役は、参加者全員の意見について公平な取り扱いが求められます。自分の意見や見方を持ち込もうとせず、中立的な視点を持つことが大切です。
(4)司会進行の発言は簡潔に、明確な内容を心がける
司会進行の発言をするときは、発言内容を明確にして、簡潔に伝えましょう。例として、発言を促すときは「誰に対して、何の内容について発言を促したいか」を明確にします。
(5)時間意識を持つ
会議はなるべく予定時間内に終える必要があります。議論を聞いていて時間管理を忘れることのないよう、時間意識を持つことが大切です。
2. 会議の司会進行を担当する場合に必要な準備
会議の円滑な進行にはさまざまな準備が必要です。司会進行を担当する方は、以下で紹介する準備を行い、準備事項に漏れがないかも確認しましょう。
会議の司会進行を担当する場合に必要な準備を7つ挙げて、それぞれの具体的な内容を解説します。
2-1. 目的・必要性を問い直す
最初に、「開催する会議の目的は何か」「何のため、もしくは誰のために行われる会議か」を問い直しましょう。会議の目的・必要性を問い直すと、会議で達成するべきゴールが明確になり、議題に沿った進行がしやすくなります。
会議の目的・必要性は、参加者にも共有すべき情報です。会議の事前資料に盛り込んだり挨拶のときに伝えたりすると、参加者も会議の目的・必要性が理解できて、効率的な議論ができます。
2-2. 参加メンバーを絞り込む
会議は意思決定の場であるため、発言しないメンバーを含む大人数よりも、参加メンバーを絞り込んだ少人数で行うべきです。少人数のほうが一人ひとり発言する時間を取れ、意見もまとめやすくなります。
会議を円滑に進めるには、時間経過を伝える「タイムキーパー」や議事録を作成する「書記」、機材の操作担当者なども必要です。参加メンバーを絞り込んだ後は、会議に必要な役割の割り振りも行いましょう。
2-3. 開始・終了時間を設定する
会議の開始時間と終了時間を設定して、「会議がいつから始まり、いつまでに終わらせるか」を参加者全員が把握できるようにします。
会議の開始時間と終了時間を設定する際は、主催者側にとって都合のよい時間で決定事項とせず、まずは予定時間として参加者に伝えます。参加者全員が出席できる時間であるかを確認・調整した上で、開始・終了時間を決めてください。
時間を厳守できるよう、会場への開始5分前集合を徹底することも重要です。
2-4. 資料を用意する
会議に必要な資料を用意して、参加者へと配布しましょう。議題と関連する情報・統計などを資料としてまとめておくと、参加者間での知識レベルの差が少なくなり、より活発な議論を展開しやすくなります。
ペーパーレス化が進んでいる企業では、会議資料を電子データとして配布するケースが少なくありません。
ただし、会議当日に「電子データが表示できない」「読み込みが遅い」という技術的障害が発生する可能性もあります。電子データの場合は事前に配布しておく、必要に応じて紙媒体の資料も用意する、といった対策がおすすめです。
2-5. 時間配分を設定する
会議のゴールを達成するにはどのような進行が必要になるかを考え、各議題の議論や意見の取りまとめにかける時間配分を設定します。
時間配分は進行表などに記載して、参加者にも共有することが大切です。参加者が時間配分を意識するようになり、効率的に会議が進行します。
会議で取り扱う議題が複数存在する場合は、議題ごとの重要性を検討して、優先順位を決めましょう。優先順位が高い議題により多くの時間を割り振ることで、重要な議題で集中的な議論ができて、会議の成功につなげられます。
2-6. 司会進行の台本を作成する
会議の進行をスムーズに行うには、司会進行の台本が必要です。「始まりと締めくくりの挨拶」「発言の求め方」「議論が脱線したときの戻し方」などをテンプレートとしてまとめ、台本を作成します。
中でも、始まりと締めくくりの挨拶はおおまかな構成を考えて、会議当日にそのまま読み上げても不自然がないように作成してください。始まりの挨拶で参加者の集中を促し、締めくくりの挨拶で会議の総括を行うと、質の高い会議ができます。
また、台本は事前に声に出して読み上げて、内容もなるべく覚えましょう。会議の司会進行は台本を見ながらでもよいものの、内容を覚えていたほうがスムーズに進行できます。
2-7. 会議室の設備・環境を確認する
会議室の設備・環境を確認して、会議の進行などに問題がないかを確認します。主なチェックポイントは下記の通りです。
- テーブルの広さと椅子の数が会議の規模に合っているか
- ホワイトボードやプロジェクターなどの設備があり、問題なく利用できるか
- 照明が明るすぎたり、暗すぎたりしないか
- 冷暖房が使用できるか
- 周辺の音が響かないか
など
また、オンライン会議を行う場合はソフトウェアや機器類の確認が必要です。具体的にはインターネット接続やマイク・カメラの準備、音声と画面のチェック、使用するソフトウェアの動作などを確認します。
会議の参加者にも事前チェックを依頼して、当日の会議が問題なく始められるようにしましょう。
3. 会議の司会進行の流れ・例文
会議の司会進行を担当する方は、会議全体における司会進行の流れを把握することが大切です。
以下では会議の司会進行の流れと、司会進行役が説明・発言をするときの例文を紹介します。
3-1. 参加者への挨拶
会議の最初に、司会進行役から参加者への挨拶を行います。挨拶には簡単な自己紹介と会議の説明を含めて、明るく元気な声で伝えましょう。
◆参加者への挨拶の例文1
おはようございます。○○の会議にご参加くださり、ありがとうございます。本日の会議は、○○についての意見交換を行う場にしたいと思います。
会議の司会進行は私、人事課の××が務めます。それでは、会議を始めさせていただきます。
「おはようございます」から始まって、参加者への感謝と会議の説明、自己紹介までを含めた例文です。定期的に開催する会議ではなかったり、初対面の参加者が多かったりするときは、丁寧な挨拶を行います。
◆参加者への挨拶の例文2
定刻になりましたので、○○の会議を始めさせていただきます。司会進行は前回に引き続き、××が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
定期的な会議の場合は挨拶を短くして、議題に素早く移ることを優先するとよいでしょう。
3-2. 会議の趣旨・目的の説明
初めて行う会議では、会議の趣旨・目的を詳しく説明する必要があります。参加者の立場から会議の必要性が理解できるように、分かりやすく伝えましょう。
◆会議の趣旨・目的の説明の例文1
今回の会議は、来期のプロジェクトである○○について、予算の決定を行う場にしたいと思います。議論は予算にかかわる内容のみを予定しているので、議題に沿った発言をお願いいたします。
◆会議の趣旨・目的の説明の例文2
本日の会議では、○○について話し合うことを目的としています。会議前半は○○の課題を整理し、後半で改善につなげるための議論をしていただければと思います。
会議の目的を説明するとともに、会議の予定を伝えることもおすすめです。
3-3. 注意事項の伝達
参加者への注意事項がある場合は、会議の冒頭に伝えましょう。参加者全員が注意事項を理解することで、会議をスムーズに進行できます。
◆注意事項の伝達の例文1
本日の会議場所は○時○分に次の予約が入っているので、会議の延長はできません。終了時刻までに意見がまとめられるように、皆さまのご協力をお願いいたします。
会議時間の延長ができないことを最初に伝えて、時間内に会議を終えることを促します。
◆注意事項の伝達の例文2
提案がある方は、マイクのミュートを外してから、ご自分の名前を伝えてください。私が指名をした後に発言をお願いいたします。
会議では発言のルールを定めることが重要です。対面会議では挙手、オンライン会議では自分の名前を伝えるなど、ルールを明確化しましょう。
3-4. 議題の進行
議題の進行方法を説明して、会議全体の流れを伝えます。参加者に議題ごとの時間厳守を意識させて、議論の質向上につなげるためのプロセスです。
◆議題の進行の例文1
本日の会議では進行表に沿って、議題ごとに設定した時間内での議論を行います。時間内に結論が出ない場合にも延長はせず、次の議題へと移りますので、時間厳守を意識した議論をお願いします。
◆議題の進行の例文2
本日の会議で取り上げる議題は、○○についての情報共有と、○○の解決の2つです。前者の議題は30分以内に終えて、後者の議題に残り時間を当てたいと思います。
3-5. 質疑応答の実施
議題の結論が出た後には、参加者の質疑応答を実施します。質疑応答は意外と多くの時間がかかるため、質問時のルールや回答の流れを作りましょう。
◆質疑応答の実施の例文1
続いて質疑応答に入りますが、時間に限りがあるので1人あたり2つまでの質問とさせていただきます。それでは、質問がある方は挙手をお願いします。
質問できる数を設定し、質問時の挙手を定めた例文です。明確なルールを定めることで、整然とした質疑応答の場が作れます。
◆質疑応答の実施の例文2
××さん、ご質問ありがとうございます。ご質問にあった○○についてお答えします。
質問に答えるときは、質問者への返答をしてから回答を伝えます。
3-6. 会議の締めくくり
会議の締めくくりには、会議で決定した内容について確認を行い、参加者への感謝も伝えます。必要であれば次回の開催情報や連絡事項も伝えましょう。
◆会議の締めくくりの例文1
本日の会議で、1つの議題について○○、2つの議題については××という結論に至りました。それでは会議を終了いたします。ありがとうございました。
◆会議の締めくくりの例文2
次回の会議は来月の10日に実施し、会議の方法はオンライン会議を予定しております。詳細はメールで後日お伝えします。皆さま、本日はご参加いただきありがとうございました。
次回の会議について連絡事項がある場合の例文です。1回の会議では意見がまとまらなかった場合や、定期的に開催する会議の場合は、次回の開催情報を案内しておく必要があります。
4. 会議の司会進行を円滑に行うコツ・例文
会議では議論が脱線したり、議論で矛盾や衝突が生じたりするなど、司会進行が円滑に進まず困ることがあります。
司会進行役の方は、以下で紹介する2つのケースを想定して、司会進行を円滑に行うコツと例文を知っておくとよいでしょう。
4-1. 議論が脱線した場合
議論が脱線すると会議時間が浪費されてしまい、本来の議題について議論する時間が少なくなります。司会進行役は、議論が正しい方向へと修正されるように働きかけをしなければなりません。
◆議論が脱線した場合の例文1
××さん、申し訳ありませんが、今の時間は○○についての発言をお願いいたします。
◆議論が脱線した場合の例文2
議題から逸れているように思えます。○○に関するご意見に絞って発言をお願いします。
柔らかい言葉で告げつつ、本来の議題を参加者に思い出してもらいましょう。
4-2. 議論で矛盾や衝突が生じた場合
参加者の発言に矛盾がある場合や、意見が一致せずに衝突が生じた場合は、司会進行役が議論の舵取りをして問題を解決します。
◆発言に矛盾や問題が生じている場合の例文1
××さん、申し訳ありません。△△という発言は、本日の議題に対して矛盾があるように思えます。議題は○○の解決であるので、議題に沿った発言をお願いいたします。
発言のどの部分に矛盾や問題点があったかを簡潔に告げて、方向性の修正を図ります。
◆意見が発言者間で一致しない場合の例文2
意見が活発に出されているところ申し訳ありません。現時点では意見の一致が見られないようですが、各自の意見を要約しますと、おおむね○○と××にまとめられると感じました。現在の議題は結論を保留し、別の機会を設けて話し合いを行いたいと思います。
意見が一致しない場合は、それぞれの意見を要約した上で、議論を保留する形で進行します。
5. オンライン会議の司会進行をスムーズに行うコツ
Web会議システムを利用するオンライン会議は、従来形式の対面会議と比べて会議の雰囲気や進め方に違いがあります。
オンライン会議の司会進行を担当する場合には、以下で紹介する4つのコツを押さえましょう。
5-1. 誰もが話しやすい雰囲気を作る
オンライン会議の冒頭には「チェックイン」という参加者同士のトークができる時間を設けて、誰もが話しやすい雰囲気を作りましょう。
チェックインで話す内容は、参加者の自己紹介でも、会議に関する話題でも構いません。司会進行役もチェックインで一人ひとりに発言を促して、会議の進め方を確認するとよいでしょう。
ただし、チェックインは会議の本題ではないため、会議時間を圧迫しないように注意してください。
5-2. ITが苦手な人に配慮する
オンライン会議の参加者にはITが苦手な人もいるため、司会進行役は機材の設定や操作について配慮が必要です。
事前にWeb会議システムのインストールや設定をサポートしたり、操作方法をレクチャーしたりするなどが、主な配慮の例です。会議中に使用する機能の操作方法を抽出して、メモ帳などに書き出して渡しておく方法もあります。
マイクミュートのオンオフについては、司会進行側で制御するという対処法が取れます。司会進行役がサポートすることで、ITが苦手な人もオンライン会議で積極的な発言ができるでしょう。
5-3. 参加者全員が議論に参加できるようにする
オンライン会議は参加者が受動的な姿勢になりやすいため、参加者全員が議論に参加できるよう、司会進行役がサポートすることが大切です。あまり発言していない参加者に質問を投げかけたり、順番に意見を求めたりすることで、参加者全員の議論への参加を促せます。
また、参加者の顔を映すカメラはなるべくオンにしてもらいましょう。映像を通して相手の表情や感情の動きが分かるようになり、参加者が心理的な安心を得ながら発言できます。
5-4. オンラインホワイトボードを活用する
オンライン会議で議論を進めるときは、オンラインホワイトボードを活用することがおすすめです。
オンラインホワイトボードはオンライン上で使えるホワイトボードです。Web会議システムの機能として搭載されているケースが多く、搭載されていない場合でもツール単体で導入・共有して利用できます。
オンラインホワイトボードには、会議で取り上げる議題や、議論中の要点や発言を書き込みましょう。議論の内容を視覚的に把握できるようになって、参加者が考えを整理したり、全体の意見の取りまとめをしたりするときに役立ちます。
まとめ
会議の司会進行は、事前に議題を把握し、中立的な立場で円滑に進めるための準備をしておくのが大切です。まずは会議の目的を明確にし、必要なメンバーだけを会議に参加させてください。具体的な開始時間・終了時間を決め、合わせてタイムキープ用に表を作りましょう。慣れていないうちは司会者が途中で詰まったり混乱したりしないよう台本を作っておき、会議に集中できる環境を整えるのも大切です。特にオンライン会議では、慣れない人への配慮や参加しやすい環境づくりが求められます。
会議では挨拶の後、参加者に会議の趣旨や目的、注意事項を伝達し、事前に決めた配分に合わせて議題を進行してください。終わりには会議の結果を要約し、次回何をするかを明確に伝えれば、参加者の行動を促せます。